SDG Impact Japan ニュースレター7月号
▼【コラム】
欧州で相次ぐサステナビリティ・サミット
~真の変革は訪れるのか?~
今、世界は、気候変動、ロシアのウクライナにおける残虐な戦争、燃料や食料の価格高騰と不況の懸念、COVIDのパンデミックの再発など複数のシステム危機に直面しています。そして、燃料価格の高騰を背景に、世界の指導者たちは化石燃料の使用など短期的な解決策を模索することが想定されます。
そのような環境下で、欧州では、Responsible Investor Europe、B Corp Leaders Summit、Point Zero Forumなど、多くのサステナビリティ・サミットが開催されていたことに違和感を感じています。
また、 サステナビリティ投資は過去数年で急拡大しており、パンデミック中にさらに加速しました。IFCによると、2020年に2兆3千億ドル以上がインパクト投資に分類されています(注1)。
プライベート・エクイティ、ベンチャー・キャピタル、そして「伝統的な」インパクト投資、これらすべてがサステナブルな成果を生み出すことを目指しており、従来のサステナブル投資の分類が曖昧になっています。スイスとシンガポールの金融規制当局が主催したサミット「Point Zero Forum」は、金融の未来について語り合う場ですが、世界の金融を変える第一人者が、サステナブル金融をDeFiやWeb 3.0と同じように取り上げたことに違和感はなく、ごく普通のことのように思えました。
しかし、現在のESG投資で何が達成されているのでしょうか? 本当に私たちを持続可能なポストカーボン移行に向かわせているものなのでしょうか?
長年にわたり、投資ファンドや運用会社は自分たちの関与を具体的に明示することなく「ESG」を表明することが可能でした。また、従来の一般的なESG投資の多くは、ESGリスクの高い投資は除外し、プラスに貢献する企業を含めないものでした。しかし最近では、このような投資手法はグリーンウォッシュやESGウォッシュと批判されるようになってきました。
このような批判を背景に政策立案者と規制当局が対応に動き始め、EUではSFDR(サステナブルファイナンス開示規則)が投資家保護を強化しつつあり、米国証券取引委員会はファンドのESG開示の標準化に関する提案を発表しています。また、IFRS財団(国際財務報告基準財団)は、グローバルな財務報告基準に相当するESGに関する基準の作成を準備しています。
また、規制強化の裏返しとして、金融業界はもっと積極的に、本質的なことができるはずだと考えています。ただ、「Responsible Investor Europe」での議論の多くは、規制の強化に焦点を当てたものでありましたが、積極的な貢献、成果に焦点を当てた新しい投資商品に関する議論は少なかったように思えます。
SDGインパクトジャパンでは、ESG アドバイザーとして、パートナーである運用会社と共同で次世代のESG戦略を目指す「NextGen ESG Japan戦略」を打ち出し、このような課題に対応していきたいと考えています。
新しいESGアプローチを通じて、私たちは投資先企業のビジネスモデルにおける変革、すなわち実態のある成果を追求しています。当該戦略は、日本の上場している中小型企業を投資対象とした、日本初のSFDR9条に準拠したファンドを目指しています。
私たちの戦略の核となるのは、ESG要素が長期的なビジネスの収益性に直接影響を与えることができるという実績に裏打ちされた信念です。投資先企業がサプライチェーンをクリーンなエネルギー源に移行するために、私たちはどのような支援ができるでしょうか? あるいは、より多くの財務的成長をもたらすことガバナンスモデルを設計することで、できるでしょうか?
このアプローチは、投資先企業との深い関わりと、財務パフォーマンスも促進するESGレバーの特定に基づいています。
私たちは、実態のある成果を目指す効果的なサステナブル投資、効果的なESG投資は、地域に根ざし、企業との深い関わり合いに基づくものでなければならないと考えています。当社のESGアプローチを率いるサシャ・べスリックは、欧州でこのアプローチの先駆者として大きな成果を上げており、今後アジア、そしてその他地域に拡大していくことを目標としています。このようなNextGenのアプローチは、単に私たちを差別化するだけでなく、世界を持続可能な移行に向けて社会を動かすために必要であると考えています。当社の成果ベースのESGアプローチが金融市場において広範な動きのカタリストとなることを目指し、真の変革を起こすことを望んでいます。
SDGインパクトジャパン
Co-CEO Bradley J. Busetto
注1:出典
▼セミナー開催報告
ESG市場の収益機会:インパクト投資とサステナブルテック
Co-CEOのBradley J. Busettoがチューリッヒで6月21日から23日に行われたPoint Zero Forumにモデレーターとして登壇いたしました。
「ESG市場の収益機会:インパクト投資とサステナブルテック」をテーマとし、インパクト・ユニコーンの例、持続可能性の目標と経済的リターンの相互関係などが議論されました。
https://www.pointzeroforum.com/home
ロシアによるウクライナ侵攻 - ESG投資への示唆
4月13日に開催しました、当社最高投資戦略責任者Sasja Beslikによるオンラインセミナー開催の様子を公開しています。ロシアによるウクライナへの侵攻は、SDGsの基盤そのものを脅かしています。当セミナーではESG投資の位置づけ、投資家の今後のアクションについてお話しています。
「Russia's War on Ukraine: Key ESG Lessons Learned」
日本語題: ロシアによるウクライナ侵攻 - ESG投資への示唆
(オンライン、英語のみ/自動字幕)
▼SIJの活動状況・ニュース
セミナー開催のお知らせ
【AgFunder x SDGインパクトジャパン】アグリ・フードテック・インパクトピッチ
【日時】2022年8月3日(水) 15:00-17:00
【場所】AgVenture Lab(東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビルヂング9階)※リアル限定
【費用】 無料
【参加登録】https://peatix.com/event/3304952/view
【主催】AgFunder、株式会社SDGインパクトジャパン
【共催】AgVenture Lab・農林中央金庫
※感染症拡大状況により開催形態が変更になることがあります。
メディア掲載のお知らせ
ForbesJAPANに、AgFunder代表でオーストラリア在住のMichael Deanのインタビューが掲載されました。アグリテックとフードテックの現状、また、当社とのインパクトファンド「AgFunder SIJ Impact Fund」についてご紹介しています。
「世界で上場ラッシュのフード・アグリテック、日本で投資が進まない理由 」
Forbes JAPAN
https://forbesjapan.com/articles/detail/48515/1/1/1
7月7日付の朝日新聞の「兵器産業に投資、緩む基準 ITの成長鈍化も背景」に当社最高投資戦略責任者Sasja Beslikのコメントが掲載されています。
欧州および世界におけるESG投資分野で重要な役割を果たしているサステナブル・ファイナンスのオピニオンリーダーとして、ESG投資の「モラルマネー」としてのあり方について言及しています。
「試練のESGの役割逸脱に警鐘 」(7月7日 デジタル版)
https://www.asahi.com/articles/DA3S15346978.html?iref=pc_ss_date_article
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