▼グローバルサウスとエネルギー転換
4月15日-16日に札幌でG7気候・エネルギー・環境大臣会合が開催されました。同会合の共同声明(https://www.env.go.jp/press/press_01474.html)においては改めて1.5℃目標の達成に向けたコミットメントが確認されました。現在世界が直面している気候変動への対策、そしてエネルギー危機への対応は「地球規模課題」としてクローズアップされています。
「1.5℃目標」とはパリ協定で示された、世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える努力をするための目標です。1.5℃目標において、2030年までにグローバルで排出量を2010年比で45%削減し、2050年にカーボンニュートラルを達成することが求められています。
パリ協定の目標達成に向けて、各国の脱炭素政策、民間企業による再生可能エネルギーの導入や脱炭素に貢献する新技術の開発、森林吸収やブルーカーボンなどの自然由来の炭素吸収の取り組みなど、連日ニュースで様々な取り組みが取り上げられています。
中でもエネルギー問題、特に発電部門のエネルギー転換は各国の排出削減目標の達成に重要な割合を占めています。例えば、日本のCO2排出の4割を発電が占めており、電源構成の見直しは日本のカーボンニュートラルの達成の重要課題の一つとして位置付けられています。
再生可能エネルギーの導入は近年急速に進んでおり、風力・太陽光発電、そして水素などの新しいエネルギー源の開発の取り組みが進んでいます。しかし、その裏では化石燃料由来の電源は未だ増加し続けています。Global Electricity Review 2023(Ember社発行)によると、2022年に化石燃料による発電は前年度比で1.1%増加し、過去最高記録を塗り替えています。再生可能エネルギーの著しい発展にも関わらず、世界では未だに化石燃料への依存から脱却できていない現状が見られます。
それではなぜ化石燃料から脱却ができていないのか、上述のEmberのレポートから、あるデータを紹介します(下図)。
上手は地域別の2000年以降の発電需要の増加の推移と、その中での化石燃料ベースの発電量の比率です。欧州や米国などの電源構成の変化を見ると、先進諸国は既に順調に化石燃料からクリーンエネルギー中心の構造に転換しつつあります。一方で、経済発展とともに電力需要が急増しているアジア・アフリカ・中東などの新興国では、電力需要の増加と同じペースで化石燃料由来の電力が増加し続けています。
上図が示す通り、新興国・発展途上国におけるエネルギー転換を進めなければ、パリ協定で掲げる目標・カーボンニュートラルの達成は困難です。昨年のCOP27において気候変動によって途上国が被った損害に対する補償として「損失と損害」基金の設立が合意されました。これは、先進国が生み出した過去の気候変動の被害を途上国に損害補償するというものですが、これまでの被害の精算だけでなく、これからの世界の気候変動対策を考える上でも、発展途上国での気候変動対策の投資は重要です。
このような認識の下、当社では新興国・発展途上国の脱炭素プロジェクトの組成・推進を支援する取り組みを進めています。二国間クレジット(Joint Crediting Mechanism: JCM)という、新興国・発展途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、その成果を日本とパートナー国で分け合う制度を活用して、発展途上国において再生可能エネルギーなどのサステナブル・インフラストラクチャーの普及を行っています。
先月、環境省が実施する「令和4年度二国間クレジット制度資金支援事業のうち設備補助事業」に採択され、インドネシアの水力発電プロジェクトの開発を開始したほか、グループ会社を通じて新興国・発展途上国向けの脱炭素インフラに投資するファンドも設立し、運営を開始しています。
5月に広島で開催されるG7サミットでは「グローバル・サウスへの関与の強化」が重要な視点の一つとして掲げられています。地球規模の課題を解決するためには、グローバル・サウスと呼ばれる国々の様々な課題を解決し、持続可能性・レジリエンスの高い社会経済の発展を促進していくことが求められます。先進国と新興国・発展途上国の間でサステナブルな資金の流れを生みだすために、当社も微力ながら取り組んでいきたいと考えています。
(SDGインパクトジャパン パートナー 広瀬大地)
▼イベント・セミナーレポート
3月27日に開催されたJapan Fintech Festivalで、「Where ESG & Technology Meet」のパネルディスカッションに弊社取締役会長の谷家衛とCo-CEO Bradley Busettoが登壇しました。当日はESGの価値観を持つスタートアップ企業を支援し、エンパワーするために、どのようにテクノロジーを活用できるかを議論しました。 https://fintechfestival.jp/#2
▼SIJの活動状況・ニュース
環境省「令和4年度二国間クレジット制度資金支援事業のうち設備補助事業」に採択されました。
二国間クレジット創出に向けて、インドネシア・スマトラ島において3.5MW 小水力発電施設の開発を現地事業者と連携して開始しました。
本件に関するプレスリリースはこちら:https://sdgimpactjapan.com/jp/20230411/
ESG on Sundayにおいて弊社CISO SasjaとRIMM SustainabilityのRaviが対談しました。
弊社Chief Investment Strategy OfficerのSasja Beslikと、当社グループ会社である株式会社RIMM Japanを共同で展開するRIMM Sustainability Pte.のRavi Chidambaramが対談しました。
この対談はSasjaが毎週発行するニュースレター「ESG on a Sunday」に掲載されています。
▼そのほかのニュースはこちら
https://sdgimpactjapan.com/jp/news/