▼AgFunder×JETRO共催
アグリ・フードテック・ミートアップ2023 イベントレポート
AgFunderと日本貿易振興機構(以下JETRO)がホストとなり、弊社SDGインパクトジャパンが運営主体となった ミートアップイベントが7月25日に都内で開催されました。このイベントは、日本・海外のスタートアップや、日本の大手食品・飲料メーカーの担当者、ベンチャーキャピタル, 金融機関、行政などアグリ・フードテックに取り組む200名以上の方々が会場およびオンラインで参加されました。メインのピッチイベントには、日本のアグリ・フードテックスタートアップ企業の応募の中から選ばれた6社が参加。熱のこもったプレゼンテーションに、会場は拍手喝采となり熱気に包まれました。今月のコラムでは、このイベントレポートをお届けいたします。
オープニングスピーチとなったのはJETRO様。現在展開している日本企業と海外のスタートアップのオープンイノベーションのサポートや、海外企業と日本の企業家をコネクトする支援活動に関してJETROイノベーション部樽谷氏からご説明いただきました。
多角的なサポートを無償で提供されているJETROの活動報告はこれからのスタートアップ企業や企業にとっても改めてその存在意義の大きさを確認する機会となりました。
続いて、AgFunderでアジア・ディレクターを務めるジョン・フリードマン氏からAgFunderの活動に関するプレゼンテーションが行われました。
「AgFunderは、シリコンバレーとシンガポールを拠点に、アグリ・フードテックに特化したグローバルなベンチャーキャピタルで、独自のデータベースには40,000社以上のスタートアップの情報を有し、今まで1億8000万ドルの投資を行っています。AgFunderはSDGインパクトジャパンとインパクトファンドを運営しており、2500万ドルを目指してキャピタルレイズを行っています。本ファンドはCO2排出やフードロスの削減、土壌や作物のモニタリングの改善、バイオ、デジタルを通じた効率化など、持続可能な食糧システムを実現する可能性を持つ優れたスタートアップに投資を致します」と説明しました。
今回のミートアップのメインイベントとなった国内スタートアップによるピッチには、34社の応募から事前審査を通った以下の6社が参加しました。限られた時間の中で、それぞれに個性的で革新的なアグリフードのテクノロジーと事業戦略がプレゼンテーションされ、会場からも質問が多数飛び交いました。6社によるピッチは、ソリューションの期待度、ビジネスとしてのインパクト大きさ、チーム性という観点で審査が行われ、以下の3社が受賞しました。審査員からは、どのチームも素晴らしく、参加者の情熱やテクノロジーの可能性、プレゼンテーション力の高さなどが印象に残ったという総評が寄せられました。
アグリ・フードテック・ミートアップ2023大賞 「ファーメランタ」
「合成生物学による微生物発酵を通じて、有用物質生産手法に産業革命を」をミッションに持続可能、スケーラブル、安価な方法で植物由来成分の革新的微生物発酵プロセスを開発し、植物由来の多種多様で希少な成分を生産。その成分は医薬品、健康食品など人々の健康増進に使用されています。
明治ホールディングス賞 「エンドファイト」
「すべての土壌に生命を吹き込む」をテーマに、エンドファイト(微生物)技術を使って劣化した土壌上において良好な土壌上以上の農業生産を実現することを目指しています。この技術によって価値を生まないすべての土壌が高付加価値な土壌となります。実現化することで、世界における土壌再生エコシステムが構築されます。
アサヒクオリティアンドイノベーション賞 「ジカンテクノ」
一次産業で排出される残渣を二次産業の高機能素材へ転換する技術を開発。もみ殻、そば殻、カカオハスクなどを高純な素材に転換することで、カーボンニュートラル、ライフサイクルアセスメント、カーボンフットプリント、サプライチェーンの見直しにも貢献できる技術です。生産されたシリカはすでに商品実用化されています。
参加6社は以下の通りで、キユーピー株式会社より全員に参加賞が授与されました。
エンドファイト:微生物の力で、劣化した土壌環境でも良好な農業生産を実現。
フェイガー:農業由来カーボンクレジットを生成・販売。
キニッシュ:バイオテクノロジーを活用し、味に重点を置いた代替食品を開発・販売。
ファーメランタ:合成生物学により植物由来の希少成分を微生物で発酵・生産。
グリーンエース:廃棄野菜を粉末化し、様々な食品に取り入れることでアップサイクルを実現。
ジカンテクノ:もみ殻・大麦殻などの1次産業の残渣(ざんさ)を原料に、グラフェンやシリカなどの高純度な素材を製造。
アグリ・フードテック業界オピニオンリーダーのインサイト
日本の食品産業をリードする3社のパネリストによるディスカッション
6社のピッチの間には、「アグリ・フードテックが生み出すサステナビリティ インパクト&イノベーション」と題したパネルディスカッションが行われました。パネリストとして、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社前田氏、明治ホールディングス川初氏、キューピー株式会社田中氏にご登壇いただき、モデレーターは弊社Co-CEOの小木曽が務めました。技術に造詣が深く、海外ビジネス展開のご経験から語られるお話は、具体的な事例の説明や、企業理念に基づく開発の背景なども含まれており、スタートアップ企業だけでなく、参加大手企業様にも大変参考になるものでした。
農林水産省「フードテック民間協議会」もフードテックビジネスを応援
続いて行われたフードテック民間協議会の説明には、農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部から片瀬氏にご登壇いただきました。フードテック民間協議会は産官学のステークホルダーの協力を得て2000年10月に設立された団体で、食・農林水産業の発展と食料安全保障の強化に資する資源循環型の食料供給システムの構築や高い食のQOLを実現する新興技術の国内の技術基盤の確保に向けて、協調領域の課題解決の促進や新市場の開拓を後押しする官民連携の取組を推進することを目的として活動しており、すでに会員1190名(参加企業数620社)が所属しています。
海外スタートアップ企業の日本での成功事例 ~日本でのビジネス浸透の難しさ
続くパネルディスカッションでは、弊社COOの前川がモデレーターとなり「Innovation Impacts : Overseas Startups doing business in Japan」をテーマに、海外から日本に進出したスタートアップ2社の代表から事業展開事例をお話しいただきました。
キノコレザーがパリコレを歩く!
まずはキノコレザーで一躍有名になったMYCLのAdi Reza Nugroho氏。「海外市場への進出に際し、2年前に日本を潜在マーケットとして選びました。NHKの番組で紹介されたことで知名度を上げ、日本とデザイナーと協力体制を組んで市場を開拓してきました。躍進のきっかけはパリのファッションウイークへの参加したことで、キノコレザーのジャケットやスニーカーが大きな話題となりました。また、生産の安定を図るため長野のキノコ生産業者と協力し、自動化システムを導入することで、生産能力の拡大、生産コストの削減などを図りました。まだまだ課題はありますが、市場のマーケット開拓を促進してきます。」と語ってくれました。
日本のシーフードには文化的、伝統的な歴史がある
続いて登壇したのは、培養魚開発、および導入を目指すUMAMI MeatsのMelody Mathavan氏です。「世界的危機に直面する海洋資源の保護、そして日本人の魚食文化を守るため、日本に進出することを決めました。日本企業と提携しながら最先端のテクノロジーと美味しい魚介類を、世代を超えて提供するエコシステムを導入するビジネスを展開していきます。」とその抱負を語りました。
最後のセッションでは、AgFunderが2020年に出資した汎用大規模細胞培養技術開発の日本のスタートアップ、インテグリカルチャー代表の羽生雄毅氏による細胞培養研究の昨今のトレンドに関するスピーチがありました。また、Grownova氏から「日本のスタートアップを支援するベンチャースタジオの立ち上げ」についての説明も行われました。
3時間に及ぶミートアップイベントは、かなり充実した内容で、イベント終了後のネットワーキングでも意見交換や、登壇者への質問が盛んに行われ、大成功のうちに終了いたしました。
弊社では今後も同様のイベントを開催していく予定ですので、ぜひ奮ってご参加いただけますと幸いです。
(SDGインパクトジャパン マネージングパートナー 岡由布子)
▼ESG Radio: Japan's Gender Gap
弊社CISOのSasja Beslikが配信しているESGラジオにCEO小木曾が出演いたしました。ラジオ番組はこちらからご視聴いただけます。
https://www.buzzsprout.com/2199583/13444238-esg-radio-japan-s-gender-gap